備前一宮駅→吉備津彦神社→吉備津神社(本殿→回廊→御釜殿→宇賀神社)→栄西禅師誕生聖地→惣爪塔跡→鯉喰神社→造山古墳→千足装飾古墳→備中風土記の丘(備中国分尼寺→古民家→岡山県立吉備路郷土館)→こうもり塚古墳

吉備は大和と出雲の間に独自の文化を開かせた、古代のロマンの国なのだ。私はこの吉備路をすべて散策したいのだが、距離が長すぎる。仕方がないので貸し自転車で、備前一宮駅から総社駅までを走って巡ることにした。見るべき史跡が多いので東部と西部の二つに分けて紹介したい。


 吉備津彦神社
吉備津彦神社


参道を振り返る


随神門


石段を上って拝殿へ



BACK 備中松山城

200861

今日で山陽山陰の山旅を終えるつもりだ。中国百名山はまだ半分ほど残っているのだが、続きは秋にしようと思う。仙台の家を出たのが51日だったから、ちょうど1ヶ月間旅をしていたことになる。
旅の最後は吉備路を巡ろうと思っている。今日はまる一日時間をとってあるので、当然、全コース歩いてまわりたい。でも、備前一宮駅から総社駅まででは距離が長すぎる。しかたがないので、レンタサイクルを使うことにした。幸いなことに、備前一宮で借りた自転車は総社駅で返すことができるのだ。料金は1000円ちょっとなのだ。
一宮駅からは、まず吉備津彦神社に向かう。これと同じ名前の神社が尾道にもあったが…。そして、このすぐ先には吉備津神社がある。「彦」の字がないだけでよく似た神社である。
吉備津彦は崇神天皇10年に配置された四道将軍の一人である。崇神天皇10年って、西暦で何年なのかというと、日本書紀の記載を信じると紀元前88年ということになってしまう。神話の世界に入ってしまって、どうも年紀は信用できない。将軍として派遣された吉備津彦は鬼退治をしたということで、桃太郎の鬼退治伝説のモデルだといわれているのだ。
今日めぐろうとしている吉備路は、古代の吉備国の道である。古代の吉備国は弥生時代から塩の生産地であり、さらに優れた製鉄技術を有することによって出雲・大和の並ぶ強大な勢力をもっていたのだ。
駅から大きな橋を渡ると赤松林の参道の向こうに大きな門が見える。吉備津彦神社はすさまじく大規模な神社なのだ。鳥居をくぐると、さらに長く続く参道の両側は大きな池である。
池を渡りきると随神門がある。これをくぐって広い石段を上るとようやく拝殿前の広場である。境内には「千年杉」という標識のある古木がそびえていた。




サイクリングロードを走る


松並木の参道


吉備津神社の入口


絵馬殿のすぐ奥が拝殿


長い回廊が続く
 吉備津神社


本殿にお参りして、再び自転車で走って行く。神社の池の畔に沿ってサイクリングロードが整備されていた。田んぼの中を快適に走って行くと「吉備津の松並木」があった。これは吉備津神社の参道なのだ。
調子よく走っていたので、途中立ち寄ろうと思っていた「鼻ぐり塚」を通り過ぎてしまっていたことに気がついた。引き返そうかともおもったが、あきらめることにした。

松並木の参道を走って、北随神門の前に着いた。この神社は吉備中山の麓にあって、山には吉備津彦の御稜があるらしい。
石段の前には竹組の柵の中に苔むした巨石があった。これが矢置きの岩である。
広い石段を上って行くと北随神門があるのだが、工事の真っ最中で、緑のネットがかけられていた。これをくぐった先には絵馬殿があって、絵馬殿にほとんど接するように本殿拝殿がある。本殿も工事中で、鉄パイプの足組が設けられていた。こんな状況ではとても落ち着いて参拝する気になれない。

本殿の奥にはすごく長い回廊が続いている。回廊の左は山の斜面になっていて、そこに社殿がたっている。「えびす社」で、最近になって再建されたものなのだ。
回廊を行くと道着の若者でいっぱいになった。弓道の大会があるようで、その出場者が屯しているのだ。賑やかである。
回廊が右に分岐すると、その先に御釜殿がある。この神社には「鳴釜神事」というとても大事な神事があるのだが、それを執り行うのが御釜殿なのである。
鳴釜神事は桃太郎伝説のモデルという吉備津彦命の温羅退治に起源があるのだ。温羅という鬼は鬼ヶ城(この山には今回の登山旅行で登った)を根城にして一帯を荒らし回っていたのだが、吉備津彦によって退治されて首をさらされることになる。ところがこの首は気味の悪い声で泣きわめくので困り果てていたのだが、ある夜、吉備津彦の夢枕にたって、「首を吉備津神社の竈の下に埋めてくれ。そうすれば釜を鳴らして世の吉凶を知らせてやる」と告げたのだ。願いをかなえてやると鳴き声はピタリと止んだという。以来、この神事が続いているというわけである。
御釜殿の中は煤で真っ黒で、炉に火が炊かれて煙がたなびいている。正面にはススで黒くなった大きなシャモジが下がっていて、炉の上に注連縄が張られていて、すごく厳粛な気持ちになってしまった。
御釜殿の先で境内を出ると池が広がっていた。その中之島には鮮やかな朱の社があった。宇賀神社であった。
境内に戻って、本殿拝殿に引き返す。回廊は通らずにえびす社の前を通り、石段を上って一童社の前に着く。ここからすぐ下に本殿の比翼入母屋造りの屋根が見えたが、屋根から下は工事のために青いネットで隠されている。せっかく国宝の社殿を見ることができないなんて残念である。



 足守川界隈
栄西禅師誕生地への入口


サイクリングロードを走る


鯉喰神社神門


吉備津字神社から細い町並みを走って、栄西禅師誕生地に向かった。これを探すのに手間取って、かなり行ったり来たりしてしまったが、
町の人に訊いてようやく場所がわかった。
民家の横の細道に入って、石碑のたつ小さな広場に着く。栄西は臨済宗の始祖である。

自転車を走らせて集落から抜け出すと展望が開けて、山の斜面にたつ吉備津神社本殿の屋根が見えた。
水田の中のサイクリングロードを走って行く。田んぼの中を何度も鍵型に曲がって行くのだが、指導標がきちんと立っていて迷うことはなかった。
快適に走って行くと明治天皇の石柱がたっていて、ここに「惣爪塔跡」があった。大きな岩の真ん中にまん丸の穴が穿たれている。これは塔の礎石なのだ。古来「石の釜」と呼ばれていて、奈良時代前期には堂塔伽藍があったらしいのだが、今は一帯が水田となっていて発掘はできていないらしい。私がここに来たときは、農作業の人がこの石に腰掛けて休憩していた。
惣爪塔跡から川に沿って少し行って、橋を渡ったところに「鯉喰神社」があった。この神社も吉備津彦命の鬼退治の伝説があるのだ。吉備津彦と戦った温羅は形勢が不利になって、鯉になって逃れようとしたのだが、鵜に姿を変えた吉備津彦によって、ここで捕食されてしまうのだ。それで鯉喰神社というわけである。
この神社は足守川の土手に細長く石垣を組んだ上にある。小さな神門があって、そこから本殿まで回廊が延びていた。




サイクリング休憩所


中国自動車道をくぐる


造山古墳
 造山古墳群


ここからは足守川の右岸にサイクリングロードが続いている。神社からすぐの広い車道を横切ったところにはサイクリング用の休憩施設があった。
川の土手に沿って走って行くと、山陽自動車道の高架にぶつかる。ここで川の土手から離れて、西に向かうようになる。水が張られた水田の中にサイクリングロードは続く。どんどん走って行くと、田んぼの中に樹林に覆われた低い丘が見えてきた。これが造山古墳であった。
墳長
350mの前方後円墳で、全国でも第4位(仁徳・応神・履中天皇陵に次ぐ)の巨大古墳なのである。この巨大さからして、確かにこの吉備には大和朝廷に比肩する巨大豪族がいたことがわかるのだ。
せっかくなので、古墳に登ってみた。石段を上ると、樹林の平坦地でそこに古い神社がたっていた。神社の前には御手洗の巨石があるのだが、よく見たらこれは古墳の石棺なのだ。神社のたっているのが前方部で、ついでなので後円部にも行ってみた。林の草原に細い踏み跡が続いている。後円部は樹林に囲まれた草原で、何もなかった。
造山古墳のすぐそばに千足装飾古墳があるので立ち寄った。石室の壁には「直弧紋」という文様が刻まれているというのだが、中に入ることはできないので、外から古墳らしき丘を見上げただけであった。(この直弧紋は風土記の丘の吉備路郷土館で、レプリカであるが見ることができた。)



 備中風土記の丘
風土記の丘に向かう


国分尼寺中門跡


郷土館入口


畑の中に続くサイクリングロードを西に走って行くと、小高い山が近づいてくる。
林の中に入ると、「備中国分尼寺跡」という説明版がたっていた。赤松の林に中門跡とか金堂跡などという標識がある。金堂跡には礎石もあった。

ここから少し走ると、岡山県立吉備路郷土館である。あたりはきれいに整備された公園で、そこには江戸末期の民家が移築されていた。旧山手村役場と旧松井家住宅である。時間をかけて見学してしまった。
郷土館に着いたら子供たちでいっぱいだった。遠足でやってきているらしくて、郷土館の職員が展示品の解説をしていた。私がここで一番興味を引かれたのが、千足古墳にあるという直弧紋様である。レプリカが置いてあったのだ。九州で見た装飾古墳のものとそっくり同じである。
郷土館から引き返すと、すぐ下に池が広がっていて、その向こうには五重塔が見えた。吉備路の代表的な風景である。
五重塔のある備中国分寺に向かって自転車を走らせると、途中に「こうもり塚古墳」があった。六世紀後半に造られた全長100mほどの前方後円墳である。ここでは石室に入ることができるのだ。石室は長さ20mほどで、中には家型の石棺が置かれていた。仁徳天皇の恋人黒日売の墓という伝説がある。


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