猿沢の池から石段を登って行くと、左に三重塔がある。塔への参道の右に大きな石があった。摩利支天石という標石がたっていて、宝蔵院胤栄守り本尊と刻まれている。宝蔵院というと、宮本武蔵が立ち会ったあの槍の宝蔵院のことだろうか。
三重の塔の前に立つ。崇徳天皇の中宮藤原聖子たてた高さ18.4mの塔で国宝に指定されている。そんなに大きい塔ではないのだが、なにかしら引きつけられる美しさがある。
石段を登り切って、右に行くと南円堂の前に着く。藤原冬嗣が父の不比等のために建てた八角円堂なのだが、これは寛政元年(1789)に再建されたものである。西国三十三カ所の9番札所になっているので、巡礼の人で混雑していた。
南円堂から東に参道を歩いて行くと、東金堂と五重塔が聳えている。この参道の左には基壇があって、礎石が並んでいる。このさらに奥には中金堂と仮金堂があるのだが、現在発掘調査中で立入禁止なのだ。
東金堂前に立つ。聖武天皇が元正天皇の病気平癒を祈願して建立したものだが、応永22年(1415)に再建したものである。正面に吹き放しの柱が並んだ造りは唐招提寺の金堂に似ている。でも、なにかしらずんぐりした感じで、私は好きにはなれない。東金堂の後ろには国宝館がある。ここには私の大好きな仏像がたくさん収蔵されていて、特に阿修羅像は絶対に見逃せないものである。
この東金堂の右に五重塔が高く聳えている。光明皇后によって建てられたというのだが、今の塔は6代目で、応永33年(1426)に再建されたものなのだ。でも、高さは50mもあって、京都の東寺の五重塔に次いで、日本第二の高さで、国宝に指定されているのだ。
興福寺らしい眺めである。時間は15時53分、正倉院展を観るにちょうどいい時間になった。
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