この先にもっと展望のいいところがあるのではないかと、さらに急いで歩いて行く。尾根は緩やかな登りが続き、両側には常に灌木が生えているのだ。その間からチラリチラリと岩峰やニセイカウシュッペが見えるだけなのだ。道の左側には深い谷があって、そこには雪渓が残っている。その谷をはい上がるように雲が湧き上がってきて、目指す山を隠してしまおうとしている。どんどん歩いて行くと、丸い大きな山と岩峰の間に三角峰が見えてきた。これがニセイカウシュッペだろうか。(…とずうっと思って登っていったのだが、これは前峰で、左の丸い大きな山が山頂なのだ。)
登山道は岩峰に向かって登って行く。その険しい尾根の右半分は湧き上がる雲で隠れている。雲に霞む大岩壁がいかにも険しい。
あと2kmの標識を見たのは9時7分、登山口から1時間20分ほど経過している。灌木に覆われた尾根を緩やかにアップダウンしながら歩いて行くと、見晴台の標識があった。私は見晴台はとっくに過ぎたと思っていたのだが、ガイドブックの標準時間以上に時間がかかっていた。せっかく見晴台に着いたのだが、この頃一番雲が湧き上がっていて、ほとんど何も見えなかった。
岩峰に向かって急登する。振り返ると、登ってきた尾根が一望できる。そして雪渓を残す谷が長く続いている。
登山道は岩峰を越えるのではなくて、この左を捲いてトラバースするのだ。よかった。
この頃から道は高山植物の花がたくさん見られるようになった。展望も開けた尾根をトラバースして行くと、雲が晴れて青空が広がる。行く手に三角の前峰が聳えて、そこから尾根が左に伸びて大きな丸い山に続いている。雪渓の谷を抱き込むように尾根が続いているのだ。ここまで来て、ニセイカウシュッペは大きな平たい頂をもつ山がそうだとわかった。
尾根の鞍部に着く。そこには山頂まで1kmという標識がたっていた。私は今までのトラバースで岩峰を捲いてしまったと思ったのだが違っていた。行く手にはさらに険しい岩壁がそそり立っていた。これが大槍である。断崖に沿って急登する。この急な登りの途中にもたくさんのきれいな花が咲いていて、足下が不安定でありながらつい立ち止まって写真を撮ってしまった。
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