沢津橋から流れを見下ろすと、岩が重なり、その間を緑を帯びた清流がしぶきをあげ、すごくきれいであった。
橋を渡って5分ほど行くと、道ばたに「孫杉」の説明板があった。倒れた古木から新たな芽が吹き、それも倒れて三代目が今茂っているという姿である。屋久杉の生命力の強さは想像を超えるのだ。
孫杉のすぐ先に「仏陀杉」がある。樹幹はゴツゴツしていて、縄文杉に似た感じである。幹周り8m、樹高21.5m、樹齢は1800年といういかにも屋久杉らしい姿である。
ヤクスギランド周遊も終りが近づいて、現れたのが「双子杉」。伐採された切り株から二本の杉が生えている。この二本の杉はまだ若くて屋久杉とは呼べないようなのだが、伐採による更新がどんなものよくわかるのだ。
最後にあらわれるのが「くぐり杉」。くぐり杉というのは屋久島にはいくつかあるのだが、この杉が特徴てきなのは、すごく高いところで二股になっていることなのだ。これは上方の小杉が倒れ込んで、二本が融合してできたものなのだ。
この杉を名前の通りくぐって、少し行くと下に吊り橋が見えてくる。清涼橋でこれを渡ると、ヤクスギランドの出口はすぐである。
これらを観光して、駐車場に戻ったのは13時40分であった。
売店・休憩施設のある「森泉」で時間をつぶして、バス停でバスを待っていると、若い女性の登山者と話をすることになった。鹿児島の人なのだが、今はカナダにいてネイチャーセンターの仕事をしているのだそうだ。霧島山が一番好きだといっていたが、この連休に帰国したので、今まで訪れたことのない屋久島に今日、やってきたのだという。そんな話をしていたら、バスが来て、あわててバスに乗り込んだ。ここで、私はとんでもない失敗をしてしまった。バス停の前のベンチにステッキを忘れてしまったのだ。若い女性と話をして浮かれているからこんなミスをしてしまう。重いザックを背負って縦走するときにステッキがないのは本当につらい山歩きになってしまう。
しかたがないので、紀元杉から引き返すことにした。
紀元杉に14時35分に着いたバスは、14時58分に合庁前に引き返すのだ。これに乗ってヤクスギランドに向かう。
バスの中で考えたのだが、引き返したとしても忘れたステッキがまだそこにあるかどうかわからない。なんか、バスがものすごく遅く感じた。
ヤクスギランについて、バスから見るとステッキがまだそこに置かれているではないか。助かったと思った。重いザックを背負って歩くときは、ステッキがあるかないかで、疲れの度合いがまったく違うのだ。
このステッキを持って、紀元杉に向かって引き返す。結局、淀川小屋〜ヤクスギランドはすべて歩いて往復することになってしまった。バカだ…。
自分の失敗でムダに歩いていると思うと疲れは倍加するもので、ブツブツ言いながら歩いていると、紀元杉のそばで「紀元命水」を見つけた。すくって飲んだらおいしかった。疲れが少し癒された。
小屋に戻って、残っていた缶ビールで、今日の自分の愚かさを祝って、一人で乾杯した。
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