オリーブ園の次は「醤(ひしお)の郷」を散策することにした。
醤というのは、塩を加えて発酵させた塩蔵品のことで、米や豆を発酵させた「穀醤」が醤油の原型だという。醤油・佃煮工場が軒を並べている草壁港の南の一帯を「醤の郷」と呼んでいるのだという。ここでは明治時代に建てられた醤油工場やもろみ蔵が今も現役で活動しているというので、観てまわることにしたのだ。
小豆島で醤油造りが始まったのは江戸時代、文化4年頃といわれ、今、大小20軒余りの醤油醸造会社があるのだ。また、この醤油を使った佃煮も盛んで、全国の30%を占めるというからすごい。
醤の郷の散策路はいくつかあるのだが、まず「馬木散策路」歩くことにした。
県道28号線のY字路で細い道を東に入る。駐車場があるはずなのだが見つからなくて、路肩に停めてしまった。駐車禁止の標識はないから大丈夫だろう。
民家の間に細い流れがあって、これに沿って歩いて行くと左にヤマサン醤油の蔵が見えた。小川に沿って板塀が続いていて、白い土蔵があったりしてすごくいい雰囲気である。
小川を渡って路地に入ると、すぐに正金醤油のもろみ蔵がある。あとで調べたら、この蔵は築120年で、醤の郷でもっとも古い蔵ということがわかった。見学して行くべきだったが、前を素通りしてしまった。
民家の路地から抜け出すと、左手に「石井平治醸造場跡」があった。山を背にして板張りの蔵が二棟たっている。現役のような気がするのだが、もう営業していないらしい。
ここから田んぼの中の田舎道を行くと、右にプレハブの工場のような建物が見えてきた。これが「坂下醤油」で、ここでは工場見学もできるというのだが、建物は本当にただの町工場のようで見学する気は起きなかった。
さらに歩いて行くと、右手には正金醤油のもろみ蔵があった。黒い板壁の蔵である。
道は緩やかな上りが続いて、土手の前で右折する。この土手の向こうは今坂池という灌漑池で、この土手に上がって見下ろすとすぐ下に煉瓦の煙突がたつ「山吉醤油跡」が一望できる。今は正金醤油になっているのだ。その向こうにはさっき歩いて来た町並みが広がっている。いい眺めである。
あとは田舎道をのんびり歩いて町のほうへ引き返して行く。町並みが近づき、正金醤油の蔵がたつ角で右折すると車の前に戻った。でも、まだ観てない金両醤油に向かった。流れに沿って西に歩いて行くと金大醤油の板壁の倉庫が続く。武家屋敷のような立派な門があって、白い土蔵が建っていた。
そこから少し行くと県道に出てしまったが、右に金両醤油直売場の広い駐車場があった。この工場直売所はもろみ蔵を改造したもので、中に入ってみた。
車で少し走ってマルキン醤油に行った。これから苗羽散策路を歩くのだ。
まずマルキン醤油の工場見学をした。入場料210円を払わなければいけなかった。工場見学というのは企業広告も兼ねているから無料というのがあたりまえなのに…と思ったら、入口でマルキン醤油のミニボトルをくれた。これで、210円の価値はあったかもしれない。(ついでに、ここでお土産に醤油を買ってしまった。)
マルキン醤油は明治20年の創業で、見学した「マルキン醤油記念館」は創立当時の蔵を利用したものなのだ。この建物と工場奥の天然もろみ発酵蔵は国の有形文化財に登録されているのである。工場の中の展示もおもしろくて、特に昔のポスターでは新珠三千代がCMタレントをしていたことを知った。この工場見学で、すっかりマルキン醤油のファンになってしまった。
醤油記念館から出て、長く連なる醤油蔵に沿って歩いてみた。板壁の蔵は本当に長く続いていて、その規模の大きさに驚いてしまう。
引き返して「黒島伝治文学碑」を見に行こうとしたが、道路工事中で、その入口がよくわからないので止めてしまった。
招集工場見学を終えて車を走らせて行くと、佃煮のお土産屋さんが軒を並べていて、「醤の郷」というのを実感した。
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