2006年10月9日
中断していた甲信越登山を再開する。
二つの台風が合体した低気圧がようやく通り過ぎたのだ。でも、この低気圧は2隻の大型船を転覆させて、山では白馬と穂高で遭難者を出している。
私は無理な登山はしないのだ。天気が回復したので登山に出かける。
前回の続きは斑尾山を登る予定だったのだが、そこまではかなりの距離があるので、途中いくつかの山に登って行くことにした。
安達太良山、太郎山、榛名富士、浅間隠山、志賀山、笠ヶ岳を登ってから斑尾山に登るのだ。
最初に登る安達太良山は仙台からは130kmである。
この山には一度登っているのだが、もう一度登ろうと思う。前回は野地温泉から縦走したのだが、今回は塩沢温泉からくろかね小屋経由で登るつもりだ。
最近、あだたらスキー場から薬師岳までロープウェイが通じて、これを使うとラクに山頂に行ける。もちろん私はそんな安直な登り方をするつもりはない。
仙台を夜の11時過ぎに出発して、塩沢登山口に着いたのは深夜2時であった。夜が明けるまで仮眠。
低気圧が通り過ぎた後なので、カラっとした快晴になると思っていたらそうでもなかった。青空は見えるものの雲が多い。風も強いようだ。
駐車場からスキー場の中に入って行く。左にスキーのゲレンデが広がっているのだが、登山道はその下端を横切って行く。すぐに樹林の中に入る。緑の中にまっすぐに登山道が続いていて、気持ちのいい道である。15分ほどで分岐に着いた。右に行くと僧悟台で、左がくろがね小屋への道でである。
この分岐から10分で沢を渡る。この小さな流れが水場になっていて、「金剛水」という案内が立っていた。私は湧き出ている水でないと飲む気がしない。流水というのは、北海道でエキノコックス病というのを知らされているので、どうも怖いのだ。
左に大ききな谷が続いている。湯川という川が流れているのだ。この谷川の流れの音をききながら歩いて行く。
落石注意の案内があるので見上げると、巨岩が頭上にある。登山道は岩がゴロゴロするようになって、傾斜もきつくなってきた。
三階の滝の分岐に着いたのは8時5分である。滝を経由して屏風岩に至る道があるのだ。私は滝が好きで必ず立ち寄ることにしているのだが、この道はすごい下りになっている。どうも谷底まで降りてしまうようなので、帰りに寄ることにした。
巨岩が目立つ道を登ってゆく。スラブをトラバースしたりするのだ。
滝の分岐から15分ほどで屏風岩入口に着いた。さっきの道はここに通じているわけである。
ここから下を見下ろすとすごい深い谷である。帰りの滝見物が楽しみである。屏風岩から10分ほどで、八幡滝に着いた。この滝は登山道から眺めることができるのだが、滝に下る道があるので、行ってみることにした。横幅が広くて、堂々とした滝であった。
この滝からは湯川が狭まって、登山道はこの流れのすぐ近くを行く。なんどか、流れを渡るのだ。粗末であるが、橋がかけられていて、ロープも張ってある。このロープを手すり替わりにして渡るのだ。
天狗岩につく。どこにその岩があるのかと探してしまったが、林の上に鋭い岩が見えた。
橋で流れを何度か渡って行ったが、橋がないところに出てしまった。対岸には登山者がいて、靴を履いているところだった。あまり深い流れではないのだが、靴を脱いで渡るしかない。裸足で流れを渡って行く。水がものすごく冷たかった。向こう岸に着くころには足がしびれるようであった。帰りもこうして渡らなければいけないかと思ったら、少し気が重くなった。
樹林の中を行き、荒竜岩を過ぎると「高層湿原」の看板があった。でも、あたりを見回してもそのような広い湿原がない。いったいどこにあるのかと探してしまった。
ここから少し行くと樹林から抜け出して展望が広がる。紅葉のすばらしい景色である。もう紅葉が始まっていたのである。
傾斜も緩やかになって、きれいな紅葉の中を登ってゆく。行く手には紅葉の山腹の上に屏風のような絶壁が見える。これは鉄山から東に延びる尾根なのだ。青空に紅葉が映えて、すばらしくきれいである。
こうした景色を見ながら行くと、くろがね小屋が見えてきた。登山道は広い道に出た。これは奥岳からくる道なのだ。ここまではほとんど人に会わなかったのに、とたんに登山者が多くなった。
くろがね小屋に着いたのは9時35分である。この小屋では温泉にも入れるのだ。小屋の前で休憩。目の前に紅葉の絶壁が見える。そして、すぐそばには白い裸地に広がりがある。有毒のガスを噴出しているようで、立ち入り禁止になっていた。この向こうには安達太良から鉄山へ続く稜線が見えるはずなのだが、雲に隠れている。山頂からの絶景を期待していたのに…。
登山者がどんどんやってくる。子供連れも多い。考えて見たら、今日は3連休の最終日なのだ。天気もいいし、日本百名山の山だから、登山者も多いはずである。
小屋の前からは急な登りが始まる。きれいな紅葉の中の登りで、あまり疲れを感じない。
ようやく平坦地に着く。安達太良山のほうは雲に覆われている。
でも、登って行くにつれて、雲が晴れてくる。うれしい。
行く手の稜線に三角の山が見える。地図で確認するとこれが篭山のようで、そのあたりを登山者が歩いているのが見えて、この登山道も奥岳から通じているものなのだ。
峰の辻に着く。さっき見えていた登山道との合流点である。ここから私は鉄山に登って、それから安達太良山を目指すつもろだったのだが、間違えて山頂に直接向かう道を行ってしまった。峰の辻からは一旦下って涸れた沢を渡って、それから山頂に向かって一気に登って行くのだ。山頂は雲の中で見えないのだが、雲が風に流されて行く。晴れて欲しい。
岩がゴロゴロする急な斜面を登って、ようやく稜線に着く。雲が晴れて、山頂が見えた。でもこの稜線ではロープウェイ駅からの登山道と合流する。登山者はさらに増える。安達太良山頂の山頂は乳首といわれる岩峰の上にある。稜線の上にちょこんと岩峰があるのだ。これを山麓から見ると、安達太良山は女の人が仰向けに寝ているようで、この山頂がちょうど乳首のように見えるのだ。
山頂前の広場には人がいっぱいであった。さすがに連休の日本百名山である。
すぐに山頂に向かう。登山者が列をなしていて、途中のちょっとした岩場でも待たされたりした。登山者の話を聞いていると、30分もかかったと言っている。
山頂に着いたのは10時45分であった。人がいっぱいで記念写真も撮れない。
山頂は岩が累々としている。風も強いので、その岩陰に腰をおろした。見ていると、稜線を20人ほどの団体がやってくる。これはどうしようもない。下山路は益々混雑しそうである。よく見たら、みんなが登ってくる登山路の反対側にも道がある。少し険しいので通る人は少ない。この道を下ることにした。
山頂の下の広場も人でいっぱいである。
ここから鉄山に向かう。稜線の道である。霧が流れて、時々視界がふさがれる。
15分ほどで、牛の背の分岐につく。ここから左に下ると峰の辻を経由してくろがね小屋である。鉄山はここをまっすぐに稜線を行くのだが、私はなぜか勘違いして左折してしまった。痩せた稜線を行く。右には真っ白な火口原が広がっている。沼の平である。
私が初めて安達太良山に登ったとき、この沼の平の景色には驚いてしまった。こんな山の上に、真っ白な平原が広がっているのだ。なんてすごいんだと思った。
細い稜線を辿って、登り返して船明神山に至る稜線に着く。ここで地図を見て道を間違えたことに気がついた。引き返す。
でも、この道からはようやく雲がとれた鉄山を見ることができた。
分岐に戻って、鉄山を目指す。
痩せた稜線で、ずぐに矢筈森に着く。山名の標識がない。そのまま下って行く。痩せた尾根で、馬の背という。さっきは牛の背だったが…。
振り返ると、矢筈の森は鋭い岩峰が見えた。帰りに矢筈森のピークに行ってみようと思った。かなり険しい稜線である。急下降して急登する。
岩場の道をジグザグに登って行くと、稜線の向こうに山小屋が見えた。鉄山避難小屋のようなのだが、遠目には新しいきれいな小屋に見えた。登山道は鉄山山頂の左を捲いて、向こう側の稜線に着く。鉄山には少し来た方向に引き返す。すぐに山頂であった。三角点があって、文字がほとんど消えてしまった山名の標識があった。
鉄山山頂は完全に雲の中であった。風も強い。
安達太良山の標高は1699mなのに対して、この鉄山は1709mなのだ。でも、この鉄山を訪れる人は少ないのだ。
雲中、引き返す。
牛の背の分岐に戻って、ここから峰の辻に下る。この下山路は登山者が列をなしていた。私は、登りはゆっくりと歩くのだが、下りはどんどん行ってしまうほうである。なんかトロトロとこの行列にしたがって歩いて行くのは耐え難い。登山道から少し外れたザレた道をどんどん下っていった。この行列はくろがね小屋まで続いた。
小屋の前の広い道を少し行き、私の登ってきた塩沢登山道に入ると、とたんに人に会わなくなった。静かな山になった。
靴を脱いで流れを渡り、あとはどんどん下って、屏風岩の入口に着いたのは2時である。
登山道からはそそりたつ絶壁の上に登山者が二人休んでいるのが見えた。この屏風岩の上からはりっぱな滝が見えた。登ってくるときは気がつかなかった滝である。相恋の滝というのだそうだ。この屏風岩から谷を見下ろすと、目がくらみそうな高度感がある。
ここから三階の滝に向かって下る。道はかなり荒れている。あまり人は通らないようだ。
どんどん下って、谷底まで降りるのだ。
最初の滝があった。登山道は滝に沿って急降下して、その途中に滝を眺めるところがあった。さらに流れに沿って下る。道は荒れていて、ときどき踏み後程度のものになって、迷わないように注意して行かなければいけない。
二番目の滝は全貌を見ることができない。登山道からすぐそばを流れ落ちる滝の一部を見るだけである。
道はさらに急峻になって、梯子やロープで急下降する。
三番目の滝は滝つぼまで下ることができた。そこから見上げると、三番目の滝の上に二番目の滝も見えた。すごい。滝を見に来てよかったと思った。
あとは登山道にもどるために、急な斜面を登る。ようやく登山道に戻ったのは、屏風岩から下り始めて30分たっていた。
湯川に沿って下り、登山口に戻ったのは3時である。
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塩沢登山口
僧悟台との分岐
金剛水
三階の滝分岐
八幡滝の分岐
湯川に沿って行く
天狗岩
靴を脱いで渡渉する
くろがね小屋が見えてきた
くろがね小屋
峰の辻への登り
安達太良山山頂に向かう
山頂下の広場は人でいっぱい
安達太良山山頂
鉄山への縦走路を行く
鉄山への登り
鉄山山頂
牛の背から峰の辻に下る
峰の辻に戻った
三段の滝。湯川渓谷を下る |