行者帰しを過ぎると道は露岩で、これを刻んで階段のようにしてあるのだ。少し行くと、右に長い梯子が見えた。これが奥の宮へ登る梯子で、急な岩盤に真っ直ぐに伸びている。梯子の上には岩窟が見える。もちろん行ってみる。
急な梯子を四つんばいで登って行くと、岩窟の少し手前で梯子が二段ほど壊れているところがあった。ここは慎重に越えて、ようやく岩窟の前に着く。岩窟の中には鳥居があって、その奥に小さな社が祀られていた。
簡単に手を合わせてすぐに引き返したのだが、梯子の下りはけっこう怖かった。
登山道に戻って、平坦なトラバース道を行くと、すぐにすさまじい急登になった。木の根が網のように張り出すやせた尾根を登って、傾斜が少し緩まったら新しい桟がかかっていた。岩場の険しいところはきちんと整備されているのだ。少し安心した。…と思ったら、すぐに露岩のすさまじい登りになった。「危険
要注意」という標識がたっている。注意されなくても、見ただけで十分危険なことはわかるのだが…。
痩せた岩尾根を登った先には銀色の階段が見えてきた。この急な階段で岩場を登ると一旦平坦になったが、すぐに次の階段があった。二つ目の階段を登り終えて、急な斜面をジグザグに登ると、東剣ノ峰まで300mの指導標がたっていた。もうすぐである。
急斜面を斜めに登って尾根の上に出て、杉林の痩せた尾根を行くと、ロープが下がる急な登りになった。これを登り切ったところが東剣ノ峰であった。樹林に囲まれた狭い山頂である。
東剣ノ峰からの下りはすごかった。銀の梯子を下るのだが、この梯子がすごく長い。ようやく梯子を下りきって、登山道に着地したときはほっとした。
次の西剣ノ峰を目指す。この道は意外なほど緩やかな登りで、痩せた岩尾根を登ると10分ほどで「展望台30m」の標識の前に着いた。
ここからは遠くに高原山をみることもでき、間近には石裂山を眺めることができた。石裂山はすさまじい岩壁を持った山である。でも、ここでとんでもないことに気がついた。ここから石裂山に続く稜線がないのだ。行く手はすっぱり切れ落ちているではないか。どうするんだよ…と叫びたくなってしまう。
登山道に戻ると、すぐ先が西剣ノ峰の山頂であった。ここも樹林の中で展望はない。山頂に立つ指導標を見たら、東剣ノ峰まで100mとなっていた。すごく苦労して登ってきたのだが、たった100mの距離だったのだ。そして、次の石裂山までは300mとなっていた。普通、300mだったらすぐだと思うのだが、ここでは安心できない。
まったくその通りで、まず長い長い梯子の急降下であった。梯子は何連にもなって続いているのだ。展望台で見た通り、すっぱり切れ落ちている崖を梯子で下るのだから当然なのだが…。
ようやく登山道に着地して、平坦な鞍部を行くと指導標が立っていて、ここから神社に下る道があった。石裂山まではあと200mである。岩場の険しい道を登って、さらに杉林の中を急登すると斜面を斜めに登るようになり、ようやく尾根の上に着く。指導標に従って尾根を左に登ると石裂山山頂であった。14時50分になっていた。樹林に囲まれているのだが、北側が開けていて日光方面の山々を望むことができた。山頂には三角点もあった。この先、険しい岩場はないはずなので一安心である。山頂で休憩した。
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