車の往来の多いこの車道を横切って、阿部倉温泉を目指して歩いて行く。民家の間の細い道になると、石仏に屋根だけをかぶせたお堂があった。このすぐ先に指導標がある。右に下って林の中を行くと、石仏石碑が並ぶ分岐に着く。ここにも指導標がたっていた。このあたりは細い路地の分岐がいっぱいあって、道標がないと迷ってしまいそうである。
今度はY字路が現れた。右に上って行くと阿部倉温泉で、左に下る道が大楠山となっている。でも、ガイドブックでは阿部倉温泉を通ると書いてあるのだが…。
ともかく指導標を信じて歩いて行くことにした。細い道を歩いて行くと、車が頻繁に通る音がする。道は高速道路と並行して続いていたのだ。でも、地図を見ても、このあたりを高速道路は通ってしないのだ。道を間違えたかもしれないと心配になった頃、指導標があった。
自動車道の高架をくぐって少し行くと、山道の入口があった。遊歩道のようにきっちり整備された道を下って、沢の流れの岸に下る。あとはこの流れに沿って歩いて行くのだ。
鬱蒼とした林の谷が続く。本当に深山という感じである。沢には露岩が多くて、ナメ滝になっていた。
ようやく沢を離れて階段道の急登が始まる。この階段の登りはきつくて長かった。薄暗い林の中をひたすら登って行くのだ。ようやく行く手が明るくなったら、網のフェンスが続いていた。その奥にはきれいなグリーンが広がっている。もう大楠山山頂だと思ったのにゴルフ場が広がっているのだ。グリーンの奥にはアンテナ塔がいくつも立つ大楠山が見えた。まだかなり登らなければいけない。
ゴルフ場の金網に沿って歩いて行くと、衣笠城跡の分岐があった。ここから緩やかに下って平坦地に着くと指導標が立っていて、まっすぐに行っても大楠山なのだが、右に曲がっても大楠山であった。右の道は階段230段と書いてある。これは山頂に向かって直登する道のようである。覚悟を決めて、この階段道を上ることにした。
すさまじく急な階段が続く。これを息を切らして登って、ようやく山頂広場に着いたのは9時10分であった。按針塚の駅を出てから2時間20分経っていた。
山名の大きな標識の前には、コンクリートで囲まれた三角点があった。私は山頂に立つと、つい三角点を探してしまって、三角点があるとうれしくなってしまうのだ。
真っ青な空が広がっていて、いくつもアンテナ塔が聳え立っている。よく見たらその中の一つは螺旋階段の展望台であった。さっそく登ってみることにした。螺旋階段の途中にも、踊り場のような展望台がついているのだが、ともかく一番上まで上った。けっこう高度があって怖い。でも、眺めは最高である。
山頂のベンチに座って、パンをかじっていると、けっこう登山者が登ってくる。ランニング登山の人もいた。
山頂からは前田橋へのコースを下る。階段を下って行くと林道に出て、ここに指導標があった。右が前田橋、左は大楠芦名口である。ここでわかったのだが、前田橋への道は関東自然歩道の道でもあった。私は、いずれ関東自然歩道を全部歩こうと思っているのだ。
平坦な広い道を行くと、指導標の上にリスがいて遊んでいた。かわいい。写真を撮ってしまった。
行く手に、てっぺんにドームをもった高い塔が聳えている。これは国土交通省の「大楠山レーダー雨量観測所」であった。この塔の向こうには展望休憩所もあって、この一帯にはコスモスが一面に咲き乱れていた。きれいだった。
山道になって、林の中を緩やかに下って行く。
大楠山から前田橋までは3.5kmほどで、1時間ほどの行程である。どんどん下って行くと、濃い緑の照葉樹林の中に入って、溝の中や露岩の道を下ったりする。下るだけだと思っていたが、尾根の上を行くので、アップダウンがけっこうあるのだ。かなり疲れてきていて、ちょっとした登りもきつく感じた。
階段でジグザグに急下降すると、下に沢の流れが見えてきた。沢の岸辺には降りてしまわずに左に回り込むと、林から抜け出した。すぐに小さな橋を渡ると、舗装道に出てしまった。
渡った川が前田川で川に沿って遊歩道がつくられている。でも、私は舗装道を歩いて行くことにした。林の中の舗装道を10分ほど行くと町並みになって、車が行き交う国道に出た。ここに前田橋バス停があった。10時20分になっていた。
5分ほど待ったら逗子行きのバスがやってきた。
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