露岩の展望台のすぐ先に送電線の鉄塔があった。ここからうっそうとした照葉樹の中に入って10分ほど、山の左斜面を斜めに登って行くと、尾根の上に出た。
クヌギなどのきれいな自然林の尾根を急登すると、杉林の中に入ってしまった。あとはひたすらこの杉林を登って行くのである。道は尾根の左斜面を行き、尾根を乗り越えると右斜面を行き、といったぐあいで尾根の右、左と縫うように登って行くのだ。
左斜面から尾根の上に着くと、指導標がたっていた。鉄塔から50分たっていた。私のガイドブックには標高570m付近で東の展望が開けると書いてあるのだが、そんなところはなかった。
このあと、尾根に上り着いて方向が変わるところに指導標がたっていたが、山頂までの距離は書いていないので、今、どこまで来ているのかさっぱりわからない。
前の指導標から20分ほど杉林を登ると、尾根の上に2つ目の指導標があった。この先、尾根を忠実に登るようになって、左は杉林だが、右は自然林になった。
5分ほど登ると、猪狩山・古池をさす指導標がたっていた。ここが「タツミチ」である。
これで、やっと自分がどこまで登ってきたのかわかった。
狭まった尾根を登って行くと、登山道の右下に林道が見えた。もう山頂が近いはずなのに、林道が通じているなんてがっかりしてしまうではないか。林道の側にはロープが張ってあった。
この先、すごく急な登りになった。檜の植林帯を急登して、ゆるやかなアップダウをすると痩せた尾根にちょっとした岩場があった。このすぐ先に「大滝(強石)」をさす指導標があった。ここまで来たら山頂はすぐである。
広い斜面を登って行くと、樹林の中に赤いお堂がたっていた。山頂は樹林の中だろうと思ったら、この少し上に展望の開けた山頂があった。山頂にたつのは善寛神社の奥宮なのだ。傍に鐘が下がっている。三等三角点があった。
山頂には方位盤があって、これで見える山がわかるのだ。
まず正面に岩峰を連ねるのが両神山である。左の下には秩父湖が見える。この上に聳える大きな山塊は白石山(和名倉山)である。さらにその左奥に山並みが見える。今回登るかどうか悩んでいる飛龍山と大洞山である。この山並みの左にするどく聳える三角峰が雲取山らしい。この手前に岩峰が見えるのだが、妙法ヶ岳だ。感動してしまう。杉林の単調な登りでイヤになっていたのだが、この展望で、十分苦労は報われたといものである。
北には谷川岳や赤城山が聳えているはずなのだが、遠くは白く霞んでしまっていて見えなかった。さらに目をこらして見ていたら、あの二子山の岩峰が見えた。東岳・西岳の岩峰が聳えている。うれしくなってしまった。
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