四合目から少し行くと、山の斜面が大きな岩礫に覆い尽くされているのが見えた。この先に採石場があるのだ。道の両側には昔切り出されたのだろうと思われる巨岩がいくつも放置されていた。
登る行くにつれて、ブルドーザーの騒音が聞こえてきて、山が削られて岩壁がむき出しになっているのが見えてきた。その下ではショベルカーが動いていて、岩がぶつかる音がする。
昨日までは秩父にいて、石灰採掘のために山が削られているのを見てきたのだが、ここでは採石のために山が削られている。こうした山の破壊をなんとかできないのだろうかと思ってしまうのだ。
採掘現場から5分ほど登ると林道終点で、登山道が始まった。入口には注連縄が張られていた。
照葉樹の中の急な登りが始まる。ジグザグの急登はすぐに終わって、緩やかな一直線の道になった。右には深い谷が見える。
古い杉の倒木が道を塞いでいたりする。照葉樹の濃い緑の中を登って行くと、加波山まで30分という指導標があった。二合目からここまで45分しかたっていないのだが。
でも、あと30分だけかと思ったら、足が軽くなった。このすぐ先に六合目の標石がたっていた。
檜の林から照葉樹の林をに入り、急な登りが続く。500mほど登ると小さな流れを渡った。そこには七合目の石標があって、山椒魚谷という石標もあった。私のガイドブックはここが水場と書いてあるのだが、とても飲める水には見えなかった。ただし、私のもってきたガイドブックは1983年の発行なので、26年も前のものなのだ。それだけの年数がたったら、水も汚れてしまうだろう。
この先も急な登りが続き、道は岩がゴツゴツして歩きにくくなった。大きな岩が目に付く道を行くと道から少し離れたところに石柱が見えた。近寄ってみたら八合目の石標であった。昔はこの前を道が通っていたのだろうか、それにしても、踏み跡らしきものは見えないのだが…。
八合目も過ぎて、山頂はもうすぐだ…と思うのだが、急な登りは続く。いいかげん、稜線が見えてきてもいいはずなのだが。
道は角材の階段道になった。でも、よく見たらそれは鉄であった。この階段道の急登が続く。ようやく行く手が明るくなったが、そこは山頂ではなくて林道であった。舗装はされていないが林道がこんな上まで通じているのかと驚いてしまう。
林道を横切ってさらに登って行くと、道はえぐれた溝の中を行くようになった。この頃、雨がポツポツと降ってきて、いつの間にか空はどんよりとした灰色の雲におおわれていた。そしてすごく寒くなった。今日の天気予報は晴れだったのに。
行く手の林の後ろに空が見えるようになった。稜線はもうすぐである。山頂まで30分と書いた指導標のところから、本当に30分かかっていた。
ようやく登り切ると、尾根には石畳の道がつけられていて、古い碑がたくさんたっている。関東自然歩道の指導標もあって、加波山頂へはここから400mと書いてあった。まだ15分はかかりそうである。
石畳の参道の向こうには石の鳥居と石段があって、その上に社殿が見える。石段の上り口には加波山神社と刻まれた石柱がたっていた。石段を上りきって、石の鳥居をくぐると、加波山神社の社殿がある。この社殿の前に手書きのイラストがあって、それによるとこれは加波山神社拝殿なのだ。下にあったのが里宮で、ここが拝殿。さらに山頂の途中には親宮や本宮があって、その本殿があったりと、なんか、こんがらかってくる。
親宮の右にも社殿がたっているのだが、これは三枝祇神社の親宮拝殿なのだという。いろんな神社がありすぎて、もうどうでもよくなった。 目の前にはすさまじく急な石段が続いている。もうひとふんばりしなければいけない。
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