私が楽古岳に登ったのは11月の初旬であった。北海道の山は10月に入ったら、もう冬山になってしまう。標高1500m弱のこの山に、この時期に登ったのはちょっと無謀であったかもしれない。
1992年11月3日
広尾から札楽古川に沿って車を走らせ、林道の終点まで車で入ることができた。途中にゲートがあるのだが、これは開いていたのだ。
林道終点からはすぐに札楽古川を渡る。渡ったところが尾根取り付き点ということになる。
すぐに急な登りが始まる。さすがに日高の山、めちゃくちゃにきついではないかと思って登っていたが、この急登はそんなに長いものではなかった。よかった。
広い尾根で、樹林の中の笹の間を登って行く。
傾斜はきつくなったり緩やかになったりする。展望が開けて見渡すと周りの山々は紅葉一色である。秋の山はいい…と思っていたのだが、それは甘かった。
最初、天気はよかったのだが、登るにつれてどんよりとした雲が覆い始めて、風がすさまじく強くなってきた。ゴウゴウと木々を揺らして吹き付ける。
主尾根にたどり着く。1230m標高点である。
ここからようやく傾斜は緩やかになって、ダケカンバの疎林の中を行く。
この主尾根を登ってゆくと、景色は一変して、冬山そのものになった。木々にはエビの尻尾がびっしりとついている。風はますます強くなって、頬にあたる冷たい風は痛いくらいだ。
冬山用のパーカーを持ってきてよかった。毛糸の耳あてをして、その上にパーカーの帽子をかぶる。
山頂直下は本当に冬山登山になってしまった。私は、北海道で冬山登山する気はまったくなかったのだが。
雲は強い風に流されて、展望が開けたりする。登ってきた尾根を振り返るとすごい。こんな長い道を登ってきたのかと思うと、けっこう自分の頑張りをほめてやりたくなる。
山頂に着いたのは11時を過ぎた頃であった。山頂の標識にはビッシリと雪は凍りついていた。冬山だ。
その寒い山頂で、もってきた缶ビールを開けて飲んだ。秋だからビールを持って行ったら、冷えていいだろうと思っていたのだが、冷えすぎであった。
寒い中でガタガタ震えながら、せっかく持って来たのだからと、止せばいいのに冷たいビールを飲んだ。おかげで、すっかり凍えてしまったので、早々に引き返すことにした。
北海道の秋山を甘くみた報いである。
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登山道入り口
尾根に出た
尾根からの展望
灰色の雲がかかり始めた
楽古岳山頂にて |