さて、つぎに目指すピークは1259m峰である。標高差は200mほどなのだが、一旦かなり下らなければいけない。これアップダウンの繰り返しがペテガリ登山なのだ。
笹藪の急な斜面をどんどん下って行く。せっかく登ったのに…と恨めしくなってしまう下りである。
鞍部からはすさまじい登りが始まる。笹の急斜面をひたすら登って行くのだ。1259m峰は目の前に壁のように立ちふさがっている。息を切らして登って行って、振り返ると1050m峰がすごく下に見えた。
白樺の白い林を見ながら急登する。ようやく傾斜が緩まって、平坦な尾根を歩くようになったが、この1259m峰も標識がないので、どこが山頂なのかわからない。尾根を歩いて行くと、樹林の間からペテガリ岳を眺めることができた。すごく遠くに、高く聳えている。あそこまで行かなければいけないのだ。本当に長い距離を歩くんだ…と実感した。
尾根のアップダウンが続く。ダケカンバの林の間からはペテガリが時々見え、そして北にも高い山の連なりが見える。これがヤオロマップ岳で、その左に続く稜線の途中に高く聳えるのが1839m峰であった。感動的な眺めである。でも、樹林越しなので一望することができない。早く展望の開けたところに登り着きたい。足が速まる。
南の展望も時々開けて、神威岳の眺めが本当にすばらしい。
地図によると、1259mからは1293m、1191mと越えて、1301mの展望台ピークに至るのだが、この間のピークはよく確認できないのだ。
でも、1301mだけは確認できる。ペテガリに至る尾根で、一気に大きく下る直前のピークが展望台なのだ。
1301mに向かっては一旦、すごく下らなければいけない。鞍部から見上げると、1301mピークは壁のように大きく立ちふさがっている。これを登るのかと思うとため息が出てしまうのだ。
ダケカンバなどの美しい緑の林を登って行く。よやく傾斜が緩やかになると展望が一気に広がる。展望ピークに着いたのは8時32分であった。
今まで樹林の間からしか見ることができなかったヤオロマップ岳から1839mに至る稜線が一望できる。ペテガリ岳が目の前に大きく聳えている。振り返ると中ノ岳から右に伸びる稜線の先には神威岳がそびえている。何もいうことのない絶景である。晴れるのを待って登ってきて、本当によかったと思う。
展望ピークからはほとんど平坦な稜線をたどる。行く手の稜線の先に高いピークが見えた。もしかしたら、あっちのほうが本当の展望ピークなのではないかと思ったが、登山道はこの左を捲いて、一気に下りになった。
樹林の中をどんどん下って行く。せっかく稼いだ高度がどんどんなくなって行くのだ。鞍部に着いてようやく登り返す。…と思ったら、もう一度下って笹原の鞍部に着く。ここからが本当のペテガリ岳への登りである。標高差500mをひたすら登り続けるのだ。
ダケカンバの緑の中、急登が続く。道は背の高い笹藪の間に続いていて、笹につかまっての急登が続く。30分ほど登ると、笹の中にハイマツが混じるようになった。
樹林を抜け出して、振り返ると、さっきの展望ピークがすごく下に見えた。行く手高くに三角のピークが見えるのだが、これは山頂ではない。この後ろに本当の山頂が隠れているのだ。灌木のトンネルに入ったり出たりしながら急登を続ける。
ようやく見えていたピークにたどり着く。でも、ここはピークではなくて、この先傾斜が少し緩まるだけなのだ。行く手に本当の山頂が見える。ハイマツに覆われた端正な三角ピークである。
振り返ると、今日たどって来た長い尾根が遙か下に一望できる。その尾根の奥には神威岳が聳えている。すばらしい眺めだ。山頂に向かって最後のガンバリをする。ハイマツの間にはキバナシャクナゲなどの花が咲いていた。
山頂には二本の鉄の棒がたっているのが見える。登山者の姿も見えた。
ようやく山頂に登り着いたのは10時31分であった。山荘から5時間45分かかった。
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