BACK 富良野から層雲峡
2007年7月14日
明るくなると、車のドアを開け閉めするバタンバタンという音がしだした。もう登山の準備を始めているらしい。ニペソツは往復8時間ほどの山なので、そんなに焦る必要はないと思うのだが…。しかも、車がどんどんやって来る。今日は土曜日で三連休の初日なのだ。私はそれらの騒音にも耐えて、6時頃まで寝てようと思ったのだが、結局4時半には起きてしまった。
車の中でお湯を沸かして、ココアを作って飲んだら、もう出発準備OKである。
出発は5時であった。
登山道入口からすぐに沢の流れを大きな丸木橋で流れを渡る。
樹林の中の急登になったが、すぐに登りは緩やかになって、あとはひたすら針葉樹が鬱蒼と茂る中を登って行くのだ。
40分ほど歩いたところで「ニペソツ6.0km」の標識があった。まだまだ先は長い。
でも、疲れはない。層雲峡から富良野岳に縦走したときは重いザックを背負っていたのだが、今日は日帰り装備だからラクなものである。でも、後から来る登山者にはどんどん追い抜かれてしまう。私は歩くのはゆっくりなのだ。そのかわり休憩は少ないのだが。
6km地点から17分歩いてニペソツ5.5kmの標識があった。この調子だと山頂には何時に着くんだろうと思ってしまった。
ようやく針葉樹林から抜け出したのは6時20分頃である。せっかく展望が開けたのに雲の中で何も見えなかった。ニペソツからの展望のために層雲峡で2日も待ったのに…。
ハイマツの回廊を通って、さらに背の低い潅木の間を抜けて行く。登るにつれて空が明るくなって、なにかしら薄く青くなってくる。これは晴れてくれるのではないかとうれしくなった。
歩き始めて1時間40分、行く手に大きな岩が立ちはだかった。登山道はこれを越えるのだ。今まで、ほとんど緩やかな登りだったのだが、ここで岩場が現れるとは思わなかった。
お花畑も広がっていた。チングルマやウコンウツギが群落をつくって、すばらしくきれいである。
ニペソツまで4.0kmの標識を見たのは、歩き始めて1時間50分経過した頃である。
エゾコザクラのピンクの花も咲いている。空は益々明るくなって青空がはっきりしてきた。ダケカンバの白い幹に日が射すようになり緑が輝き始めた。
7時13分、ハイマツの中の小さな広場に着くと、そこに指導標がたっていて、道は左折する。ここからは大きな石がゴロゴロする道を登って行くのだ。空は完全に青空になった。
天狗平からニペソツの雄姿が眺められそうだ。振り返ると一面の雲海である。その雲海の上に山が浮かんでいる。地図で確認すると石狩岳のようである。
登るにつれて、雲海の上に浮かぶ山々がはっきりしてきた。すばらしい眺めである。頭上の空は真っ青というよりは群青色になっている。今日は快晴だ。層雲峡で待ったかいがあったというものである。
石狩岳連峰の姿がはっきりしてくる。その奥に雪をいただいた山塊が見えるが、これが大雪山であった。旭岳から左に山々が連なっているが、ついこの間、私が縦走した山々だ。登って行くにつれてさらに視界が広がり、大雪からトムラウシまで見えるようになった。うれしくて涙が出そう。
足元には高山植物が咲き乱れ、イワヒゲやミヤマリンドウがきれいだ。
ハイマツの絨毯のなかに岩がゴロゴロする広い道が続いて、かなり歩きにくいのだが、傾斜はそんなにきつくない。
天狗平に着いたのは7時50分である。ここで始めてニペソツを眺めることができるのだ。
目の前に聳えるニペソツはすばらしい岩峰の山である。深田久弥が日本百名山を選定するにあたって、未登であったため選外にしてしまったと、後で悔やんだすばらしい名峰である。
いままで見えなかった十勝連峰も眺めることができた。右からオプタテシケ、美瑛岳、十勝岳と連なっているのが一望できる。
眺めていて飽きることがない。ここで30分ほど休憩してしまった。
さて、この天狗平からニペソツ山頂まではかなり遠い。何度かアップダウンしなければいけないのだ。まず岩が累々とする斜面を下る。ペンキ印や赤いテープに従って慎重に下って行くと、ナキウギの声が聞こえた。
鞍部から緩やかにハイマツの中を登る。そして、そのピークからは急下降しなければいけないのだ。遥か下に鞍部が見え、先行する登山者が小さく見える。険しい道が続くのだが、目の前に聳えるニペソツの姿は本当に迫力満点で、ついつい立ち止まってシャッターを押してしまうのだ。それに雲海に浮かぶトムラウシや十勝連峰。写真ばっかり撮っている。
遠くの景色だけではない。足元にはイワブクロが咲き、コマクサもみつけてしまった。山を眺めたり花を見たり、まことに忙しい。
急下降して、鞍部からはハイマツの中の急登になる。いよいよニペソツに向かっての登りである。ニペの断崖絶壁が間近に迫って、すさまじい迫力だ。左に雪渓が落ちこんでいるのが見え、その崖縁にはハクサンイチゲやチングルマが美しく咲いていた。
本峰への急登が続く。山の右斜面を斜めに登って行き、回り込むと山頂が思いのほか間近に見えた。登山者が休んでいるのが見える。
山頂到着は9時半であった。
山頂からは石狩岳、表大雪、高根ヶ峰、忠別岳、トムラウシ、十勝連峰と連なる大パノラマが一望できる。私が苦労して縦走した山々がここで一望できるなんて、なんてシアワセ。
山頂ではツバメが飛び交っていた。そのツバメが傍を飛びすぎるとシャーという空気を切り裂く音がするのだ、すごいと思った。
景色に飽きることがなくて、山頂に1時間もいることになってしまった。
帰り道でもたくさん写真を撮ってしまった。朝、霧でみえなかったコースでの景色がけっこうきれいだった。
針葉樹林の中を下って行き、沢の流れの音が聞こえ始めて、急下降したら登山口の前の沢の徒渉点であった。車の前に戻ったのは13時45分である。
明日もなんとか天気はもつだろうと期待して、石狩岳に登ることにした。登山口は近い。
石狩岳の登山口に着いたが、この先に岩間温泉がある。施設はなにもなくて、お湯が湧いているだけらしいのだが、そんな素朴な温泉に入ってみるのもいいと思って、行ってみることにした。5分ほど走ると沢の流れに遮られて、林道は行き止まりである。そこに大きな木の柱がたっていて、岩間温泉300mと書いてある。300mくらいなら歩くことにした。タオルだけを持って歩いて行くと、驚いたことにロッジ型の大きなテントがたくさんたっていている。テントの横に停まっている車は大型の四輪駆動なので、あの沢を渡ってきたらしい。このすぐ左、沢を渡ったところが温泉であった。丸石をコンクリートで固めた湯船が二つあるだけで脱衣場もない。キャンパーには女性も混じっていたので少し恥ずかしかったが、ここまで来たのだからと温泉に入った。いい湯だった。二つの湯船のうち、一つはすごく熱かったが、もう一つは比較的ぬるい。両方に浸かって大満足。
石狩岳の登山口に戻って、椅子・テーブルを出して食事をした。
明日は晴れて欲しいものだ。
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十六の沢登山口
すぐに沢を渡る
鬱蒼とした針葉樹林を行く
巨岩が立ちふさがる
霧が晴れてきた
左折する。すっかり青空
天狗のコルへの登り
天狗のコルに着いた
まず急下降する
ニペソツの絶壁を見ながら登る
山頂から登山路を振り返る
ニペソツ山頂
岩間温泉入口
岩間温泉
岩間温泉
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