BACK イルムケップ山


2007626

私は会社を辞めてから毎年、梅雨の時期は北海道の山を登ってきたのだが、昨年で北海道登山は卒業したつもりでいた。ただ、心残りがあった。それが崕山である。
北海道百名山という本は山と渓谷社版と北海道新聞社版の二種類あるのだが、そのどちらにも崕山が登載されている。花が美しく、しかも稜線は鋸の歯のような白い岩稜の山である。ヤマヤならなんとしても登りたいと思う山なのだが、残念ながらこの山は登山禁止なのだ。
登山禁止となったのは貴重な花々がすさまじい盗掘にあって、荒廃の一途をたどっているためである。私は自然保護のためだったら入山を制限したりするのは当然だと思っているので、この山の登山はあっさりとあきらめていた。ピークハンターであったら、北海道百名山完登のためには登山禁止を無視しても登ろうとするかもしれないが、私にはそういう気はまったくない。それで崕山は未登であるが北海道登山を終了させることにしたのだ。
ところが、崕山に登る方法が一つだけある。それは芦別市が毎年6月頃に「崕山自然保護モニター登山」を行うので、これに応募して当選したら崕山に登ることができるのだ。
5月の初旬、芦別市に応募要領を確認して応募した。そうしたら見事に当選したのだ。
当選者は参加申込書・誓約書・参加料6000円を事前に送らなければいけない。さらにあわせて、レポートも提出するのだ。レポートのテーマは
1.崕山の入山制限について
2.学習会付きモニター登山について
3.現在の自然保護のあり方について
3つの中から一つ選んで原稿用紙2枚ほどにまとめるのである。
もう北海道に来ることはないだろうと思っていたのだが、崕山登山のために再び北海道の地を踏むことになったのだ。

崕山自然モニター登山会は二日間の日程で行われる。初日は3時間ほどの事前研修会で、会場は「道の駅スタープラザ芦別」の中にある「星の降る里百年記念館」であった。
私が参加したのは今年第4回目の登山会で、参加者は22人であった。参加者名簿をみると、やっぱり高齢者が多くて60歳以上が15人もいる。最若年が28歳で、最高齢は78歳であった。
スライドを使って今の崕山の状況と自然保護の状況の研修があり、意見交換も行われた。
以下は研修会資料からの抜粋である。

崕山は芦別岳の東北部にある標高1066mの山で全山が石灰岩なのだ。夕張山地は新第三期末から四期にかけて1000mほど隆起したのだが、そのとき海底の堆積物であった板状の石灰岩も押し上げられて直立し、その後風化作用によって現在のゴジラの背びれのような岩峰群になったのだ。
石灰岩地帯はアルカリ性で栄養分が少なく乾燥しているために、きわめて特異な土壌環境となる。そのため、希少な高山植物が数多く生育することになるのだ。
崕山には、キリギシソウやオオヒラウスユキソウ・イチョウシダなどの貴重な植物の群落があり、350種もの植物が確認されているのだ。
特に、絶滅が危惧される植物が25種類もあって、キリギシソウ・ホテイアツモリソウ・キバアツモリソウは希少野生植物として厳格な保護の対象となっているのだ。
崕山は1999年から入山制限(登山禁止ではなくてあくまでも制限なのだという)しているのだが、それまでの自然破壊はすさまじいものだったのだ。
まず、プロによる希少植物の大量盗掘が繰り返されたことである。ガーデニングブームで園芸業者が人気の高い高山植物を扱うようになって、希少植物は高額で裏取引されるのだ。19926月には、キリギシソウが土ごとマット状に剥がされるという大量盗掘が発覚、その後も盗掘は止まず、ラン科の植物は絶滅寸前まで激減したのだという。
またこうした自然破壊に追い討ちをかけたのが中高年の登山ブームだった。営利目的の登山ツアーの団体が山におしかけ、登山マナーや自然保護の意識の欠落した観光登山者が山にひしめくようになったのだ。崕山には決まった登山道がなかったため、こうした無知な登山者がお花畑に踏み込み、ゴミを捨て、裸地を広げていったのである。悲惨としかいいようがない。
外来種の侵入の影響も大きい。登山者の靴底などに付着して侵入した強烈な繁殖力をもつ外来植物が、在来の希少植物を駆逐しようとしているのだ。
こうした壊滅的な崕山の自然を守るために、1999年に官民一体となって崕山自然保護協会が設立され、入山規制を行うようになったのだ。規制が始まった当初は、ゲートやその鍵を壊して侵入しようとする悪徳業者があとを絶たなかったそうである。
1999年以来8年間も入山規制を続けてきたのだが、そのおかげでお花畑の斜面につけられてしまった踏み跡が次第に植生回復してゆく状況をスライドで見たら、なにかしら無性にうれしくなってしまった。
明日はいよいよ、このあこがれの崕山登山である。

(崕山の登山記録のページはできあがっているのだが、公開するのをためらっている。崕山の自然を守るためには触れずにおいたほうがいいのではないかと思ったりするのだ。崕山はしばらく保留にしておきたい。)


NEXT 崕山
NEXT 芦別山

BACK 私の北海道の山百選




総合TOP My日本の山  My日本の道  日本の旅  自己紹介











SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送