愛別岳は表大雪の最も北に位置する山である。主峰の旭岳からかなり離れているので、私はたいしたことのない山田と思っていた。でも、実際登ってみたらすごい山だということを重い知らされた。私が訪れたのは9月も末に近いころで、もう初雪が降るころであった。
1993年9月25日
愛山渓温泉を出発したのは7時半である。もっと早く出たかったのだが、釧路からは遠いのだ。
愛山渓温泉からは林道を行くのだが、すぐにゲートがあって、車を乗り入れることはできないのだ。
右に沢の音を聞きながら林道をしばらく行くと、三十三曲コースの分岐があった。私はそのまままっすぐに沢に沿った道を行く。歩き始めてから50分ほどで、昇天の滝があった。ガイドブックには羽衣の滝を小さくしたような滝と書かれていて、かなり期待していたのだが、今の時期は水量が少なくて、まったく迫力のない滝であった。残念、私は滝が大好きなのだが。
この昇天の滝を過ぎると、沢の流れが滝となって落ちているのが見えてきた。これはけっこうすごい。村雨の滝というのだ。
登山道はこの滝の右を急登する。これはきつい登りである。滝の上に着くと、ゆったりとした流れになって道は平坦になる。ほっとしたのだが、この流れを飛び石で対岸にわたったら、いよいよ永山岳の本格的な登りになった。
この急な登りはものすごく歩きにくい。最初は笹とダケカンバの中の石がゴロゴロしる道を行くのだが、途中から滑りやすい泥道になった。でも、このあたりから展望が開けてきた。紅葉が真っ盛りで、すばらしくきれいである。そして、谷を挟んだ向こうには沼の平の大沼・小沼が見える。すばらしい展望だ。行く手にはなだらかな稜線が見えてくる。いかにも北海道らしい、広々とした高原が広がっているのだ。
鮮やかな紅葉を眺めながら登ってゆくのだが、傾斜は容赦なくきつくなってくる。永山岳の直下はジグザグに登る。火山灰と岩礫の永山岳山頂に着いたのは10時35分であった。残念ながら雲の中で何も見えなかった。この永山岳から愛別岳までは、まだ2時間ほどもかかってしまうのだ。この山頂で少し長めの休憩をとって、息を整えた。
永山岳から比布岳までは稜線を行くのだが、北側は大覗谷とか地獄谷と呼ばれるすさまじい絶壁になっている。
比布岳までの途中には安足間岳というピークがあるのだが、気がつかないうちに通り過ぎてしまった。
比布岳の手前に愛別岳への分岐があるのだが、とりあえずは比布岳の山頂に向かった。せっかく来ているのだからひとつでも多くの山頂を踏みたいではないか。それに、この比布岳というのは、つい「ピップエレキバン」を連想してしまうのだ。山頂に着くころには小雨になっていた。展望が得られないのが残念だ。本当は大雪山御鉢平を囲む、白雲・北海・北鎮岳の山々が展望できたはずなのだ。
分岐に戻って、愛別岳への道に入る。すぐに急降下する。火山灰の急斜面で、これをジグザグに下るのだ。
広い斜面がだんだん尾根のよう細まってきて、アップダウンをを繰り返して進む。なにしろ雲の中を歩いているので、自分がどこにいるのかまったくわからない。
大きな岩が点在する急な斜面を登ってようやく愛別岳山頂に着いた。12時20分であった。山頂には山名の標識はなくて、三角点だけがあった。
展望はまったくきかない。でも、缶ビールを持ってきていたので、これで今日の頑張りに乾杯した。
帰りは登ってきた道を引き返したのだが、途中から雲が晴れてきて、愛別岳や沼の平を展望することができた。
この山は、期待してなかったのだが、すばらしい山であった。私は三つ星でお勧めする。
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愛山渓温泉が登山口
熊出没注意の案内があった
沢の本流が滝となって落ちる「村雨の滝」
滝の上に着く
展望が開けてきた
高原が広がっていた
永山岳山頂 |